「丸山珈琲の丸山健太郎氏がやってくる!スペシャルティコーヒーのことをしっかりと正確に知る会」レポ(ちかレポ)

「丸山珈琲の丸山健太郎氏がやってくる!スペシャルティコーヒーのことをしっかりと正確に知る会」レポ(ちかレポ)

忖度って言葉をよく聞くようになったのはここ最近なのですが、珈琲の格付けの世界においてもそれは横行していたそうです。20年前までは。それまでは、ビシッと正装した超有名な生産者が受賞していたのに、「ガチ」での品評になったらいきなり、Tシャツに泥ついてるような小さな農園のおじさんが受賞するようなことが起きたんだとか。「ガチ」がどのくらい「ガチ」なのかというと、豆の状態すら目にすることのない完全なるブラインドテスト。え、豆くらい見てもいいんじゃない?と思うけど、見る人によっては豆だけで「あの国のあの農園のもの」ってわかっちゃうんだって。キメキメスーツで「どうせ次は俺呼ばれちゃうんだよね」って顔で待ってる人を差し置いて、さっきまで農場で働いてました風な人が名前を呼ばれる光景はきっととても痛快なことでしょう。そんな光景を我がことのように喜び、感動することの出来る人、それが丸山健太郎氏です。

そんな丸山氏に「スペシャルティコーヒーって何ですか?」と質問すると「生産地、生産者まで追っていけるもの。その国や農園のやり方、エリアの持っている色の反映されているもの。」という答えが返ってきました。また、この15年くらいで、それまでは飲む人によってバラバラだった味の評価について、みんなの意見のすり合わせができたことを「奇跡的」だとおっしゃいました。そうやって世界的な水準に照らし、一定以上の評価を受けたものがスペシャルティコーヒーとなります。丸山氏が最初にその存在を知った時、日本にはまだほんの僅かしか輸入されておらず、情報も圧倒的に少なかった。今なら何だってネットで調べられるけれど、当時は夜な夜な「メーリングリスト」で情報交換していたそう。それじゃあどうにもならないので、とうとう丸山氏は渡米しました。そこで出会った珈琲の美味しさに仰天します。だって、言ってもアメリカンなコーヒーって何だか全然褒め言葉じゃないし、みんな不味いのをガブガブ飲んでるイメージありますものね。もちろん現地にそういうものもありましたけど、それとは違う本当に美味しい珈琲がありました。

丸山氏の今のお姿からは想像もつきませんが、高校時代にインドに目覚めベジタリアンになった丸山少年は珈琲は嫌いだったんですって。苦くて変なエグ味が喉に残る、不良っぽい飲み物。これ飲んでたら一生悟りが開けなそうなやつ。でも奥様に出会い、奥様のお父さんに勧められて始めた軽井沢のカフェで、インドカレーとチャイを提供していたら、「珈琲は無いの?」と何度も聞かれる。じゃあ、と珈琲もメニューに加え、有田焼の素敵なコーヒーカップも仕入れました。その有田焼の仕入れ元の方に店でカレーを振る舞い、珈琲を出したら「ごめん、自分で焙煎してない店の珈琲は飲まないんだ。」と言われ、それで焙煎を勉強することにしたんだそうです。そのあたりのお話、とっても面白かったんだけど、詳細は省きます。というのは、とても繊細なことで、私が的確な言葉を選んで読んでる人に的確に伝わる自信がないから。なので私の感想だけ書きます。世界で活躍する人というのはとても謙虚で、勉強熱心で、周りの人を尊敬する心をいつも持ってるんですよね。出る杭はもちろんボッコボコに打たれるんだけど、そりゃもう悔しかっただろうけど、岩の頑丈さではなく、柳のしなやかさで跳ね返し、今のこの位置から振り返ってそれは楽しそうに笑ってお話しされる。珈琲業界の「闇」を全部ぜんぶ見てきましたから、という口調にも重さは感じませんでした。

山奥にある農園の珈琲が品評会で突然勝つと、世界中からトップバイヤーがやって来るようになります。珈琲という農作物は、地面のミネラルを長期に渡り吸い上げるという性質上、再現性がとても高いのだそう。何年も、何回も、バイヤーがやって来るその山奥には道路が出来、ホテルやレストランが建ちます。その歴史的背景から、搾取する仕組み作りに長けてる欧米に対抗するために、丸山氏はとにかく「顔を売る」ことに注力しています。1年に1回(最近は物理的な制約で2年に1回になることも)は農園を訪れ、農場主の奥さんの焼いたトルティーヤを一緒に食べ、そこで採れた珈琲を飲む。「魔法瓶なんてもんじゃないですよ、ただのクルクルっと蓋の締まったボトルに入ってる冷めた珈琲ですけど、僕にとってそうやって飲む珈琲が一番旨いんです。」それが「美味しい珈琲が採れたらケンタロウに買ってもらいたい」という農場主の気持ちに繋がるわけです。

以前、松本美佐先生がインドネシアのフローレンス島に赴き、現地で採れるカカオを使ってお菓子作りをしたことを思い出しました。カカオは高額商品ですから、それを育てている農家の皆さんは食べる機会はほとんどありません。食べるより売るほうがいいからね。でも、その美味しさを知ってるのと知らないのとで、育てるモチベーションが変わります。カカオの品質を向上させ、それによって得られる利益を増やし、農家の生活水準をあげると、それによってまたより良いカカオを作ろうという気持ちになれる。お土産にもらったカカオの実はとても香り高くて、砕いてビスコッティに入れて焼き上げたらめちゃくちゃ美味しかったな。

今日は丸山氏、お土産にペットボトルのアイスコーヒーを5本も持ってきてくれました。ホンジュラスという国のカングアール村の豆を使用しています。世界でも最貧の村と言われているそう。コーヒーはどこまでもスッキリした味わいと珈琲らしい柔らかな甘みで、常温でもこんなに美味しく飲めることにびっくり。「仕事の合間、次のミーティングまで15分休憩って時に、珈琲が飲みたくても豆を挽く時間はないから、これがいいですよ。箱買いする方も多いです。」やけに納得しちゃいます。ホンジュラスの中心街から車で5時間のこの村に丸山氏が通い続けて10年、初めの頃は電気・水道といったインフラ整備も不足していた村が今はだいぶ生活しやすくなっているそうです。せっかく美味しい珈琲を作ってくれてるのに、農園の人たちの暮らし向きが良くないのはダメだよね、という気概がcoffee pepleの中には自然と備わっているそうで、その筆頭にいるのが丸山氏だと感じました。その思いと行動は、赤澤さんもおっしゃっていたように「世界平和に繋がっている」のだと思います。

気付いたら当初の予定の2時間はとっくに超えていましたが、まだまだ聞き足りない私たちに、話し足りない丸山氏。またいつか珈琲文明でお話してくださる日を楽しみにしています。

丸山健太郎さん、ご参加の皆さん、楽しい時間をありがとうございました。(坂本 知香)