「カフェ開業メソッド~黒字で長く続くお店の作り方~」レポ 前編

「いらっしゃいませ、ただいまお出しするまでお時間かかりますがよろしいでしょうか?」


週末の珈琲文明ではよく聞く台詞です。


混雑が増してくるにつれ、「お時間かかります」の前に「だいぶ」「かなり」「相当」と修飾がどんどん凄みを帯びてきます。


それを聞くとほとんどの人が「どのくらいかかりますか?」と聞き返します。

赤澤マスターは間髪入れず「お時間のお約束は出来ませんので、お急ぎでしたらやめておいたほうがいいです。」


面白いのがその後、私がそういう場面に出会う時はほぼ全員が「あ、大丈夫です。待ちます。」と言うんです。


なぜ聞いたんだ・・・


ついでに言うと「かなり」の場合、座ってから珈琲が出てくるまで35分前後が相場です。これはきっとマスターも知らないだろうな。


そしてその「やめといたほうが」のやりとりを偶然、当時小1の息子さんが聞いて「パパなんであんなこと言うの」と驚いていたそう。


でも、それにはちゃんと訳があるのです。


赤澤さんの信条(クレド)に由って来るところ。


「自分自身や家族が幸福で、健全で堂々と公明正大な運営をすることで

そこに集まるお客様にも幸福をもたらしたい。」


カフェを開業する(カフェに限らなくとも)にあたり、まずはそこを決めましょう、と赤澤さんは言います。自分が本当にしたいことは何なのか、心の声を聞いて言葉に表すことをしてみよう。あらゆることはそれから。


赤澤さんがどうしてカフェをやろうと思ったのか、そこまでの経緯を大学卒業から遡って語ってもらうには

講座じゃ時間が足りなさすぎます。詳細を知りたい人には、珈琲文明のサイトにある「マスターの日記」がめちゃ面白くておすすめ。読破するのに1ヶ月かかると思うけど。


同じ年に同じ大学を卒業した私にしてみれば、当時こんな選択をする子がいたなんて、と

驚くばかりです。


「起業したいなあ」と考えてる人のうち、実際に起業するのは100人のうち6人ほどなのだそう。


開業して一年以内に倒産する会社は30%、


業種を飲食に絞ると半分くらいになりそう。


健全な経営を十年続けてるところは稀有な存在。カフェラボの運営陣は皆さんそれをクリアしている

優秀な方々ですが、現実に起業ってシビアなものです。


赤澤さんの話には、その後もほとんど冷酷とも言える数字がバンバンでてきます。

「起業に向いてない人」の話も容赦なく。それを知ってもなお、そんな過酷な世界で勝負していこうと

腹をくくる人のために、実績に裏付けられた知恵を惜しみなく開示してくれます。準備期間の赤澤家の家計状況まで赤裸々に。


なぜ、そこまでしてくれるのでしょうか。


それは、聴講する人が「あの日の自分」に重なるから、と赤澤さんは言います。

実は10月の「オトナチャレンジ」という企画で同じ内容のダイジェスト版を聴いている私。もちろんマスターの日記も読破済み。そんな私が今日の講座で新たに心に沁みたことは「与えられた状況をいったん受け入れて、プラスになるように考える。」という意識の高さ。


ほとんど一目惚れみたいにして、物件も決まらないまま六角橋商店街の近くに自宅を越してきて、日雇いバイトしながら半年経ってやっと得た情報「六十年やってる衣料品店が店主高齢により閉店予定。」ただ、お礼のセールをしながら半年後に閉めるというのを「待ちますからその後お願いします。」ってそこからさらに半年を費やす。


その通算一年、どうかすれば空白の時間になるところを、ガテン系バイトのおかげで、職人さんとの意思疎通がスムースにできるようになったことや半年の間じっくりと内装プランを立てられたことで「充実の一年」にした赤澤さん。


とはいえこれほど内装費かけるのはやりすぎだったと思う、と言うけど、その魅力的な空間をロケに使いたいとのオファーを受けるようになってきたそうでやっぱりその価値がだんだん理解されてきたのだと思います。


平日の夜を利用しての講座は来週に続きます。トラブル対応についてのこんな宿題が出ましたので私も考えてみようと思います。


・映画のロケの話があり、結果ボツになったのだがその内容についてブログで書いたところその映画のファンからメールで苦情が届いた。


・酔っ払い客が入ってきて、居合わせた女性客に近寄って行って「なんて綺麗なんだ」などと話しかけた。


・ホームレスの女性が長時間居座り、異臭が立ち込めた。


さあ、あなたならどのように対応しますか?


(坂本 知香)